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ことこと@チェンマイ! タイ移住ドキュメント&北タイ通信♪

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わが人生のアルバム~5

本ブログは「タイ」をテーマにしておりますが、ここではタイとカンケーなく、Tui☆Bangkok が人生で聴いたアルバムから「5枚」を厳選して紹介してみたいと思います。


NIGHT RANGER/Man In Motion (1988)

悩みに悩んだ5枚目のアルバムは、一般的には全くといって評価されていない・・・というより無視されているに近いナイト・レンジャーの5作目を選んでみました。

タイプの違う2人の超絶ギタリストのツイン・リードという実においしい素材であったのに、「Sister Christian」の予想外のヒットにより商業的にバラード路線を余儀なくされ、さらに「Secret Of My Success」という曲がマイケル・J・フォックス主演の映画の主題歌として使われたりと、この種のグループにしては稀有なほど健全な展開を見せたことが却って裏目に出た気がします。結果として中途半端な位置付けとなり、メタル派からもメインストリーム派からも無視されてしまった・・・という悲しい結末。

とうとう活動に限界を感じた彼らにとっては本アルバムが当時は「解散作」となるハズでしたが、その後一部のメンバーによる「NIGHT RANGER」名義の作品を挟んで再結成はしますが精彩はまったくなく、実質的には終っているグループといえます。ナイト・レンジャーだけでなく「再結成バンド」は概して歴史に汚点を残すだけという残念な結果になるケースがほとんどです・・・

一般的には、その中途半端なバンドの中でも特にシングル・ヒットのない「最も地味」な作品とされていますが、わたしが思うに、楽曲、演奏力および全体にみなぎる高いテンションといい、間違いなくこのバンドのピークにあると思われるのが本作です。

「Secret Of My Success」の延長線上にある、ストレートなロックンロールに哀愁バラードのエッセンスを散りばめた「青春ロック」的な楽曲が並びます。商業的には成功していた4作目までの作品ではどこか作りに「稚拙」な感じが否めませんでしたが、本作は前作までのコドモっぽい「ハチャメチャさ」が影をひそめ、骨太の男っぽいロックに脱皮しています。実力派バンドがそのポテンシャルをフルに発揮した渾身の力作といえる作品となりました。

個人的には「ロックの金字塔」といっていい完成度の高い作品と思いますが、ナイト・レンジャーというバンドを考えるとき、ロックにはやはり毒や棘の要素がないといけないんだなと実感します。ちょうどナイト・レンジャーよりはポップ路線に近いとされる「チープ・トリック」をさっき聴いていたんですが、アイドル的な人気もあった彼らがロック野郎からも認められるのは、楽曲にもルックスにもどことなく「異端」の空気が感じられるのですよね。ナイト・レンジャーはその辺り健康的過ぎるのです。インタビューなどを見てもわかるように、彼らの素顔は「イタズラ好きの元気な青年」であり、「不良少年」であったとしても少なくとも反社会的行為は行わない、先生たちからも一目置かれる程度の「元気のいい生徒」にしか見えません。考えてみれば伝説的なロックスターは薬物所持で入国拒否になったり、高級ホテルを破壊したり、メンバーが次々に死亡したり、黒魔術に傾倒していたりと、「非日常」の世界に住んでいるわけです。ロックを求めるファンのマインドは楽曲だけでなく、彼らのライフ・スタイルに自らを投影して、ほんの一瞬日常から隔離したところに精神を置いておきたいのかも知れません。

とはいえ、ナイト・レンジャーは勿体ないなー。繰り返しますが、こんなおいしい素材をしっかりプロデュースできなかったのは残念です。一般には蔑称とされる「産業ロック」に位置づけられるバンドではありますが、まったく理屈抜きで楽しめる本作のような作品をあと数枚はリリースしてほしかったなあ・・・



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